Work Text:
「林敬言。お前、この記事やばくね?!」
開口一番の台詞がこれだ。耳元から響く张佳乐の声に、恐れていた事態が起こってしまったことを実感した。
「やっぱり?」
先日受けた女性雑誌からのインタビュー。勝手がわからずいつもと同じように受けてしまった。幸いなことに自分もGLORYをやっていたという記者と話が盛り上がり、インタビュー自体はつつがなく終わったのだが、後半でいきなり恋愛関係の話を振られてしまってつい口がすべってしまった。事前にわかっていれば、もう少しごまかして話すこともできたのに……。
「いや、これは……」
言い訳をしようとしたところで、玄関の扉が開く音が聞こえた。
こんな時間に合鍵を使う人間は一人しかいない。
あわてて顔をあげると、そこには件の雑誌を手にする唐昊の姿があった。
(やば……、めっちゃ怒ってる)
実際のところ、恋愛について話していたのはほんのわずかだ。インタビューを受けた時間の1/10にも満たない。だが、雑誌の読者層に合わせたのか、掲載された記事の内容はほぼその話題で占められていた。自分の恋愛観について深く語っているようなものになってしまっている。特に終盤はかなり具体的な話になっていた。
―― 年上とか年下とかにこだわりはありますか?
『そうですね。若いころは年上の人によくお世話になって、それはそれで学びも多かったんですけど。その後、呼蕭のキャプテンとして年下のチームメイトと一緒に過ごした期間、自分は人間的にもかなり成長できたと思っています。長い人生を考えると、年下のパートナーに頼られる方が自分にはいいのかな。霸图にいたときみたいに同年代の心地よさもいいですけどね』
―― 外でデートするならどんな所に行きたいですか?有名人だからそういうのはNG?
『有名人なんてとんでもない。僕の顔を知ってる人なんてわずかですよ。人前で仲良くするのはちょっと気恥ずかしいので、どちらかというと部屋でのんびり過ごしたいかな。膝枕とかおねだりされるとかわいいなって思います』
―― 敬言さんは優しそうだから、ワガママ言われちゃうんじゃないですか?
『普段頑張ってる子が、自分にだけワガママいうのってかわいいですよね。だからつい甘やかしてあげたくなっちゃうっていうか』
―― どんなふうに甘やかしてあげたいですか?
『頭ポンポンってしてあげたり、ハグしてあげたりですかね。実家で犬を飼ってたんで、スキンシップには慣れてます』
―― なんか、もうそんな人がいるみたいですね。
『いやいやいや、あくまでこんな感じだったらいいな、ってことなんですけど!』
焦ったように答えた台詞の後、とってつけたようにGLORYの宣伝文が入りインタビューは終わっていた。慌ててごまかしはしたものの、インタビュアーにはバレていたに違いない。ぼかして書いてくれてはいるが、张佳乐が言うようにわかる人には誰のことかわかってしまうだろう。ついつい話しすぎた。
唐昊が手にしていた雑誌は今にも握りつぶされそうなくらい歪んでいた。
「インタビューで話してるやつは一体誰なんだよ!」
「やっぱ、お前のことだってバレバレだよな。ごめん!」
潔く謝って、手を合わせた。
(あれ???)
怒鳴られるくらいは覚悟していたのだが、何の反応もない。
恐る恐る眼を開くと、目の前には安心したような、怒っているような、でも何かを悲しんでいるような複雑な表情をした唐昊の顔があった。
唐昊があまりにも静かなので、想像がどんどん悪い方向へと向かっていく。
「お前のところに取材とか来てる?」
「いや……」
「もしかして……呼蕭のオーナーに呼び出されたとか?」
(やっぱりオーナーには俺が説明しに行ったほうがいいよな……)
これからの対応に思いを巡らせていると、唐昊の搾り出すような声が聞こえて来た。
「これって俺…?」
「お前以外に誰がいるわけ?」
何当たり前のことを聞いてくるんだろう。
そう言った瞬間、彼の表情が和らいだのがわかったが、すぐに苦虫を噛み潰したような顔になった。
「膝枕おねだりって……」
「お前いつもしてって言うじゃん」
「う……」
「ハグとか……」
「いつもそっちから抱きついてくるだろ」
「ぐ……」
普段の二人の生活をそのまま語ってしまったので、わかる人には分かってしまったのだろう。
「ごめんな。こんな話になるって分かってたら、『隣で優しく見守りながら自分を引っ張ってくれる、クールで落ち着いた人が理想です』とか言ってごまかしたのに……」
そうすればバレることもなかったのかもしれない。本当に申し訳なかった。
俺ってだめだな……としょんぼりしていると、何故か唐昊の肩がワナワナと震えている。
「唐昊?」
「てかさあ!アンタ、俺のことどんな風に見てんだよ?!」
「そりゃ、とってもかわ……」
「かわいいって言うな!」
ぴしゃりと言われて戸惑ってしまう。じゃあ何て言えばいいんだろう。
首をかしげていると、唐昊はイライラした様子で言葉を続けた。
「だいたいそんなにワガママも言ってねえし!」
「え……?」
思いっきり顔に出ていたらしい。
唐昊はこちらを睨むと、握りしめていた雑誌を投げ捨てた。
「分かった。お望み通りワガママになってやる」
そのままソファへと押し倒される。かぶりついてくるようなキスで唇を塞がれて舌が差し込まれてきた。
「こら!」
押し返そうとしていた腕はなんなく振り払われてしまう。
「いいじゃん、かわいい彼氏のおねだり聞いてくれよ」
拗ねたような顔をして抱きついてくる姿を見て浮かぶ言葉は一つ。
(やっぱかわいい)
そして、そんな彼がとてもいとおしい。
言うなと言われたから、 内緒にしておこう。
応える代わりに手を背中に回して、舌を絡めた。
